聖地巡礼イベントの基本理解
※あくまで個人的な意見です
※誤字脱字などありますのでご了承ください
◯はじめに
前提として今回の結論をお伝えしておきますとアニメ聖地巡礼でまちおこしという記事をよく拝見しますが、
「アニメ」だけでまちおこしはできません。
アニメを地域にただ持ち込んでも街が一気に賑やかになる。そういった夢物語の説明ではありませんのであらかじめご了承ください。
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・現時点でのコンテンツツーリズムの研究や分析、論文や書籍
イベントや企画に対する分析よりも、訪れるファンの方の行動心理や来訪者の数、経済効果の影響といった議論が中心であり、最終的には地域はしっかりと受け入れ態勢を整えて準備をしておくことが重要であるという結論で終わっているものがほとんどです。
さらに今年に入って開催された、千歳くんはラムネ瓶のなかと福井市のコラボイベントの事例を中心にしつつ、そのほか全国で開催されたアニメや漫画の聖地巡礼イベントの事例を交えてお話ししていこうと思っていますので、ぜひこの機会に全国の聖地巡礼イベントの歴史や企画にも興味を持っていただき、地元でも何かしら取り組めることがないか、そういったことを考えていただけるきっかけになればと思っています。
◯聖地巡礼とコンテンツツーリズムとは
聖地巡礼=舞台にファンが訪れる行動
コンテンツツーリズム=観光学:作品に登場する舞台ゆかりの地を訪れる旅の総称
実際に地域を舞台とした作品が1000作品以上
舞台となったスポットが全国に1万3000カ所以上
アニメでまちおこし、地域おこしという表現の多用
→経済効果やビジネスの視点での可能性が追求されるようになった
※実際に聖地巡礼だけを事業として取り組んでいる会社はほとんどない
アニメやコンテンツのまちおこしとは、
コンテンツを通して、作品の魅力とは別の地域の魅力を改めて掘りおこす機会となることで、今まで気づかなかった地域の良さを再発見できる。ファンの方は作品をきっかけにまちを好きになる。その結果リピーターが増え、継続して地域が取り組むことができれば、既存のファンと新規のファンを増やしつつ最終的には町の活性化につなげていくことができるだろうというのが聖地巡礼、コンテンツによるまちおこしの筋書き
聖地巡礼 コンテンツの地域における影響
・舞台になった店にファンが押し寄せる
⇨鷲宮神社、旧豊郷小学校、西宮喫茶ドリーム、大洗とんかつレストラン、佐賀県ドライブイン鳥
・作品のことを掲載した地方紙が一気に完売する
⇨静岡新聞
・ホテルが一瞬で予約が殺到し満室になる
⇨湯涌ぼんぼり祭り 9旅館約400人収容 1万5千人に訪れる
来場者数や経済効果という指標が先走りすぎている
そもそも観光地であればそもそも企画を仕掛ける必要がない
⇨藤沢江ノ島地域のオーバーツーリズム
地域の方々が普段気づくことがなかった町の魅力に気づき、見つめなおして、来訪するファンの方に対しての対応の意識に変化が表れるようになる→新たな集客やサービスの提供にもつながる→地域の活性化につながる
移住者の増加なども確認されている
→移住者の方のブログや記事などもネットで探すことができる
→移住のしやすさ、仕事があるかどうかという課題
湯涌温泉に実際にアニメを見て旅館で働きたいという方が数名いたが、長続きしなかったという話もある。そもそも、地方に移住をして会社員にはなりにくいので自営業をすることになるケース。観光地であれば週末がメインのサービス業も多い、何をするにも車が必要になる。コンビニがなかったり買い物での苦労、通勤時間が長くなるおそれもある。
※「氷菓」をきっかけに岐阜県高山市の市役所の選考を受け、市役所の職員として移住
※「ラブライブ」をきっかけに沼津へ移住、会計士として働く方
※「ふらいんぐうぃっち」をきっかけに青森弘前へ移住、魔女協会弘前支部を立ち上げ
→ニュースになった事例
※「聖地移住」という冊子 夷さんという方がまとめた本
→行政側が事前の移住説明会や空きテナントの斡旋、開業支援なども視野に入ってくる
こういった聖地巡礼によって地域で発生する現象や課題を分析することがまさにコンテンツツーリズム研究と呼ばれるものになる
◯聖地巡礼の歴史
主にKADOKAWAさんが運営されている一般社団法人アニメツーリズム協会さんが発行されている雑誌「アニメ聖地88」に選出されている作品や、新聞やニュースで取り上げられた作品の聖地巡礼を個人的に記憶に残っているものを中心に列挙。
最初に聖地巡礼発祥の地として記念碑も設置されている
※作品のクライマックスで駅と駅の間の約17kmを自転車で1時間で疾走する様子が描かれており、市役所の職員が実際に可能かどうかを挑戦された。その後アニメファンが集まるようになり、自転車イベントを開催するようになりました。駅の清掃活動も年2回開催され、自転車イベントには毎回70人から100人が参加している。
現在ネットで寄付を募り、記念碑を設置して駅周辺の活性化に取り組んでいる。
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※あくまで個人的な抜粋のため、過不足ありますがご了承ください
★は何かしら話題になった聖地、大きな取り組みがされていると感じた作品です
2002年 おねがいティーチャー 長野県大町市
※聖地巡礼ブーム
※2019年西宮市コラボイベント開催→珈琲屋ドリームで七夕とクリスマスにコラボ開催
→兵田印刷工芸株式会社と KADOKAWA
はじさい祭2008から神輿が登場 公式参拝イベント開催 祭には7万人が参加
鷲宮町商工会とKADOKAWA グッズが大人気→コスプレイベントも頻繁に開催
2007年 CLANNAD 京都府八幡 青森の菜の花畑が人気
→一般社団法人地域発新力研究支援センター(PARUS)
もともと南砺市でファン活動をされていた方 クリエイタープラザさくらクリエ管理。ピーエーワークスさんがもともと続けていた自治体とのタイアップイベントの運営を引き継ぐような形で運営されている→のちに湯涌温泉ぼんぼり祭りで大きな役割を担うことに
★2008年 とある魔術の禁書目録 東京都立川市
⇨とある自治体の地域振興 コラボ自販機やグッズの販売 毎年開催
⇨商店の中にサイン色紙やコラボ自販機もそのまま
⇨小学校は今でも部室が再現され、展示スペースは2階建で全て綺麗に保存
※全国的な聖地巡礼の波及
⇨2022年1月 NHK中国地方向け キスマイ宮田さんの旅番組が放送
2010年 俺の妹がこんなに可愛いわけがない 千葉県千葉市
⇨千葉モノレールのラッピング
→現地で活動されているファンの方が中心にイベント開催中
2010年 デュラララ 東京都豊島区 池袋
→豪雨災害からの復興、ぼんぼり祭りの開催 10年経過 詳しくはのちほど掘り下げ
→先月スマホアプリでARを楽しみながら巡るサービスも提供
→2011年の震災復興、あんこう祭り 前年3万人→6万人→14万人(2019年)
バンダイビジュアルの杉山さんはアニメに町おこしの力はないという意見
ランティスの関根さんの地元が大洗 クックファンの社長さん
事前に街をアニメで破壊してもいいかを商店に確認をとってまわった
※ルールではないですが、経済効果の話は一才しないこと、コンテンツには必ず終わりがある 大洗のファンになってもらうことが一番 コンテンツツーリズムを前提に行政を巻き込むことは反対という意見
★2012年 あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない 埼玉県秩父
秩父市観光課アニメ担当、残念ながら担当を変わられたとのこと
秩父では地域の神社や祭りを積極的に活用
現地では声優さんのイベントも開催され、多くのファンのかたが今も訪れる
昨年10周年を迎えて、スタンプラリーも開催。ラッピング電車も運行中
江ノ島でスタンプラリーが開催、和奏の実家のモデル「あぶらや」カフェが江ノ島のほぼ反対側、一番奥にあり店舗がありグッズの販売、展示や聖地巡礼ノートも設置され、時としてクリアファイルの新商品などが販売
コラボポスターの制作、販売 10年目を迎える
訪れるファンも多く聖地巡礼マップも配布、コラボグッズの販売(製造終了)
人吉花火大会で毎年書き下ろしのコラボポスター掲示、人吉旅館にはグッズの展示
2019年の九州豪雨によって大きな被害を受け、聖地だった神社や橋が倒壊、クラファンで復興の呼びかけなどが、現在も修復作業が続いている
→聖地はいつまでもあるわけではない
2012年 中二病でも恋がしたい 滋賀県大津市石山
京阪石山坂本線のラッピング電車
テレビでもよく取り上げられる商店街、聖地巡礼ノートも設置
長く続いている聖地巡礼、イベントも頻繁に開催され駅には等身大パネル設置
現在もスタンプラリーイベントが開催されている
★2013年 ラブライブ 東京都千代田区 神田明神(神田神社が正式)
放送当時からファンが押し寄せ、絵馬やコラボポスターなども人気
アニメとのコラボや同人誌即売会の開催など積極的に取り組む
→アニメオタクの聖地となった
2013年 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている 千葉県千葉市
千葉モノレールラッピング電車と切符やグッズの販売、2022年JRとのコラボラリー開催
今でも人気が衰えず、多くのファンが訪れている
呉では毎年大型のイベントが開催され、グッズの販売や飲食店でのコラボ、ライブなど大きな盛り上がりを見せている。ニュースにもよく取り上げられている。街をあげたファンを迎える準備をしっかりと取り組んでいる
→ホテルや飲食店が協力的な印象
★2013年 Free 鳥取県岩美町
グッズの販売などにも取り組み、多くの女性ファンが訪れている、女性の聖地巡礼も話題
2014年 いなりこんこん恋いろは 京都府京都市伏見稲荷神社
★2014年 結城友奈は勇者である 香川県観音寺市
作品のキャラクタグッズの展示が道の駅とよはまに設置され、誕生日イベントも頻繁に開催、おーしゃん食堂で誕生日会が3月末に開催された。
メンバーズカード「勇者の会」2800人以上が登録している
声優さんによるライブイベントが開催されたり、スタンプラリーやラッピング自販機の設置など、日本郵政とコラボフレーム切手やグッズも豊富に販売。
行政として観音寺市はアニメPRに2200万円を補正予算案に盛り込み、コラボポスターをふるさと納税の返礼品としている
2015年 冴えない彼女の育て方 埼玉県和光市
★2015年 響け!ユーフォニアム 京都府宇治市
京阪電鉄とのコラボ乗車券、石山坂本線ではラッピング電車を運行
観光案内所には等身大パネルやサイン入りポスターを展示
★2016年 君の名は 岐阜県飛騨高山
2016年 ハイスクールフリート 神奈川県横須賀市
★2016年 ラブライブサンシャイン 静岡県沼津市
沼津にはそもそも駅前に西部百貨店があったりとかなり栄えた駅前だった
人口減少が続き、駅前の大型店舗は軒並み閉店しいったところに作品が放送
放送当時から商工会青年部と市がサンライズと協力して取り組んできた。
おそらく沼津で開催されていないイベントはないんじゃないかというレベル
等身大パネルの設置やスタンプラリーを継続して開催している 女性ファンがメイン
※聖地巡礼が流行語にノミネート
2018年 小林さんちのメイドラゴン 埼玉県越谷市
るるぶのガイドブックの販売、キャンプ人気とYAMAHAのバイクが人気
谷川商事、フローレンという会社の存在、ラッキードリンクという存在
静岡県は県として大規模なイベント展開をしつつ各自治体ごとに聖地巡礼マップを複数作成している。すでに10冊は超える種類のマップ、実写ドラマやアニメ化されていない漫画の部分でも聖地マップと大井川鉄道とのコラボなども実施している
かなり範囲が広いところをそれぞれの自治体がしっかりと取り組んで事例の一つ
2018年 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない 神奈川県藤沢市 江ノ島
キャラクターが観光親善大使として任命され、街のPRに今後取り組んでいく予定
★2018年 からかい上手の高木さん 香川県土庄町 小豆島
港にある土庄ベースには作品の聖地ノートや展示、等身大パネルなども設置
コラボラッピングフェリーが運行、オリジナルグッズの販売も実施
映画公開も控えてこれからもっと多くのファンが訪れると予想されている
ガイドブックの販売、ラッピングレンタサイクル、スタンプラリー開催
巡礼マップの配布、フォトスポットにパネル設置、グラバー園でコスプレ衣装貸出
2018年 ツルネ 長野県長野市
2019年 さらざんまい 東京都浅草
2020年 おちこぼれフルーツタルト 東京都小金井市
2020年 銀翼のシグルドリーヴァー 千葉県館山市
2020年 放課後ていぼう日誌 熊本県芦北町
★2020年 ラブライブ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 東京都港区 お台場
お台場の至る所にゆりかもめとのコラボポスターや等身大パネル、のぼりなど設置
観光案内所はすでに半分が作品の展示になっている
今後お台場を周遊できるバスの試運転なども実施、試乗会でその内容も確認
2021年 弱キャラ友崎くん 埼玉県さいたま市大宮区 東岩槻
2021年 さよなら私のクラマー 埼玉県蕨市(わらび)
★2021年 ラブライブスーパースター 東京都渋谷区 原宿表参道
スタンプラリーが好評でファンの方も多く訪れている
多治見活用推進協議会を発足 ロケ地の観光推進PRを目的に活動
アニメと声優さんの実写という形、多治見市観光協会がアニメ放映前から街で取り組み
横断幕の設置や市の公用車を完全ラッピング
2021年 シキザクラ 名古屋(東海エリア)
オール東海で製作したオリジナルアニメーション
中京テレビが出資、アニメ製作も音楽スタジオも名古屋、声優さんも名古屋でオーディションという地域発のアニメーション
観光地PRに活用
アニメふるさと納税を活用して聖地巡礼のための環境整備の予算を確保
2022年 その着せ替え人形は恋をする 埼玉県さいたま市岩槻区
2022年 可愛いだけじゃない式守さん 東京都日野 八王子
アニメ放送前から南海電鉄とのコラボや放送中に聖地巡礼マップ制作、グッズ販売
2022年 リコリスリコイル 東京都
2022年 継母の連れ子が元カノだった 京都府
ライトノベルの作品としては大規模な聖地巡礼イベントを企画、実施
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その多くはコラボイベントであって、タイアップではないこと
コラボ=成果物(作品や地域の魅力)などの価値を高め合うこと、一緒に高みを目指しましょう、行政や市民から制作側へ提案
タイアップ=商業的な成果(売上や利益、知名度)を上げることを目的とした連携
→作品から地域にPRで連携を取りたい
→グッズの会社が地域でグッズを作って販売したいという提案
どちらを目指すのが良いかはわからない
気持ち的にはコラボという認識で取り組んでいる
◯聖地巡礼という表現に関して
世界コスプレサミットの商標登録「聖地巡礼」
=舞台探訪やゆかりの地という表現でも可能
前提として考慮すべき点
・作品として聖地と公式に発表していないケースが多いこと
・地域としてアニメやコンテンツを受け入れていないケース※文化的、歴史的、伝統工芸などの風習
・施設として許可を取らずに描かれてしまっているケース※あとあとイベント時に問題になりやすい
・店として想定していない客層が来店することに困惑するケース※オシャレな女性向けのカフェや高級感のあるレストランなど
・無断で私有地に立ち入り、撮影などをする迷惑行為が発生するケース※頻繁にみられる
・巡礼ノートへの誹謗中傷や、地域の制作物への器物損壊が発生したケース※どの作品とは追及しませんが、比較的若い年齢層で傷をつける動画を投稿して炎上、ニュースになり作品へのマイナスイメージあとを絶たない
ファンの方の行動によって徐々に時間をかけて形成されたものが、ファンの方の行動によって一瞬で失われてしまうという事実
これは強くいちアニメファンとして心掛けておかないといけない
課題とリスクが多くつきまとうことが初期から想定される
制作側として、地域へのアプローチを行う体制がそもそも存在しない
イベントの企画を考えるような部署も存在しない
行政と事業者と制作会社との交渉にはかなりの時間がかかること
・ファンにとって聖地巡礼はそもそも制作側には話題性というメリットはあってもただファンが街に観光に来るだけでは制作側の利益にはならない
※あくまでファンの自己満足ではないかという意見もある
・地域にとっては作品理解に時間もかかり大きな成果を得られるかどうかわからない
※行政で提案をした際に、ライトノベルとアニメの説明だけで15分以上かかることも普通にある
説明をして担当者が作品を見る、読むという行動まで進むかどうかはあまり期待できない
・制作側として、聖地巡礼イベントそのものが大きな利益につながるかと言われるとそうではない
※先ほど説明した通り、ライセンスの契約やグッズの販売などが増えていけば多少の売り上げにはつながるが、インパクトがあるかと言われると作品の人気に左右されてしまうので前向きに捉えにくい
・地域は聖地巡礼をどのように捉えて企画準備をしていくことが望ましいのか
・聖地巡礼ビジネスをすることはそもそも可能なのか(収益ポイントが少ない)
・作品を愛するファンとして、どのように関わっていくことが可能なのか
・制作側はどのように聖地巡礼を活用していくことが望ましいのか
本来議論すべきは企画側と制作側の双方にとってメリットになる形での実施
Ⅰ 聖地巡礼の見方
聖地巡礼イベントをどういった要素で分けて企画を考えていくのか、どういったサービスを提供していくのか
8つのポイント(5+3)を紹介
◯観光における5大要素
交通や移動手段
宿泊
地域の食
お土産
現地での体験楽しめるレジャー
①交通や移動手段
都心から近いことや乗り換えが少なく行くことができるということはそもそも大きなメリットがある
※沼津や大洗のリピート率が高いひとつの要素(あくまでリピート率は、聖地が密集していて回りやすいとか、企画の内容や満足度、地域への愛着などもあるため一概には言えない)
つまりは行きやすいかどうかという前提
かつ来ていただいた方が利用する乗り物
交通の要素を取り入れたコラボの事例
鉄道やバス・タクシーのラッピング
バス:沼津、大洗、徳島マチアソビ、舘山、唐津、福井など
※沼津はバスが5台、大洗は大型観光バスまで実施(茨城空港のタラップ車まで)
鉄道:伊豆箱根鉄道、鹿島臨海鉄道、のと鉄道、千葉モノレール、秩父鉄道など
※のと鉄道、大洗鹿島臨海鉄道は話題→住友3M社(ロゴをバスや電車に貼るので無償でフィルムロールを提供してほしいとお願いしたエピソード)自分達で貼る
タクシー:沼津、徳島マチアソビなど
※沼津:一日貸切も予約可能、ライブ会場まで乗ってくる人もいる
フェリー:沼津、小豆島
※小豆島の高木さんラッピングはアニメツーリズム協会さんが奮闘
オリジナル乗車券:伊豆箱根鉄道、鹿島臨海鉄道、のと鉄道、秩父鉄道など
→ラッピングバスが5台運航中、ティッシュBOXや缶、トミーテックバスコレ販売
②宿泊
そもそも宿泊施設があるかどうか 山梨の身延あたりは大変
また、どれくらいのキャパがあるのかという問題
ファンにとってはホテルか旅館か、聖地巡礼がメインならビジネスホテル
コラボ宿泊プランの提供:大洗(応援パック)
ツアーの提供:近畿日本ツーリストxハイフリ横須賀、温泉むすめの事例
※コラボルーム→KADOKAWAところざわさくらタウンのアニメホテルをチェック
この宿泊プランでこの料金で宿泊するかどうかは相談してみてください、逆にどうしたらこの料金でも宿泊しようと思うのか、そこに新しい企画やサービスのアイデアがあるはず
③地域の食
コラボグルメラリー企画:横須賀(ハイフリやスローループ)、呉(艦これ)
スタンプラリー・ビンゴ形式の事例(沼津ラーメン・マチアソビ)
※飲食店コラボとコラボカフェの違い
◯神戸市や福井市の飲食店コラボ
一店舗ずつ丁寧に説明、カードの在庫状況の確認報告体制
◯沼津や大洗にあるコラボカフェ
運営会社に任せて作品とのオリジナルメニューやキャラクターをイメージしたドリンクとノベルティを提供
◯アニメイトのコラボカフェ(自社管理)
アニメイトカフェという関連会社を別に立ち上げて完全に分社化して様々な作品に合わせたメニューとノベルティを提供
兵田印刷社のコラボ事業の事例:神戸市、福井市
10店舗以上と協力し、それぞれの店舗でデザインの異なるノベルティを提供
※コンビニとの地域限定コラボ(サークルKサンクスの事例)
湯涌温泉:オリジナル弁当やスイーツを北陸3県限定販売
大洗:同じような企画の展開
④お土産
だいたいどこでもやってる
※ご当地商品とのコラボ食品
のっぽ 沼津 (複数のデザイン・のっぽケース販売)
ほしいも 大洗
ほうとう 山梨
ヤシの実サイダー 立川(コラボ自販機)
※聖地巡礼コラボオリジナルグッズの販売
舞台を背景にしたグッズ
・ポスター
・クリアファイル
・缶バッジ
・ポストカード
・アクリルスタンド
・絵馬やお守り
先に挙げた60作品中で地域オリジナルデザインのグッズを販売できているところは多くない。それだけ質の良いものをつくろうとするとハードルが高い。(第二部)
⑤体験レジャー(巡礼)
そもそも地域にある景色に魅力があればそれはすべてメリットになる
※沼津や大洗は海が近い→海鮮料理が美味しいという魅力の共通点がある
※より聖地巡礼に合わせた体験企画
スタンプラリー(デジタル含む)※参加料800円という事例
宝探し
謎解きラリー(参加料:500円)
等身大パネルキーワードラリー
※アプリ、WEB関係
デジタルスタンプラリー(GPS)
ARスポットラリー(GPSで反応、キャラクターと写真が撮れる、音声付きも多い)
→キャラクターフレーム写真というサービスもある
→店で台紙を購入、シリアルコードとQRコード、参加登録後に巡るパターン
※沼津
スタンプ設置とスタンプ帳販売(100ヵ所) 通年開催、一店舗ごとに書き下ろし
→合わせて缶バッジの販売(一億円の売上) 300円 おおよそ34万個以上の販売
※聖地巡礼と合わせた祭りの開催(天候により中止や順延などが多い)
徳島マチアソビ(おへんろ八十八ヶ所スタンプラリーという事例)
アニ玉祭
はじさい祭り(鷲宮)
大洗あんこう祭り
湯涌ぼんぼり祭り
沼津夏祭り
三国花火大会
※キャラクター誕生日会の開催
沼津
大洗
観音寺
銚子
そのほか様々な作品でファンが中心となり開催
◯観光体験における3つの感覚情報
・視覚 見て楽しめるもの
設置型:ポスターや等身大パネル、のぼり、展示など)
配布型:聖地巡礼マップの作成
冊子型:公式ガイドブックの販売(ゆるキャン・スーパーカブ・ゾンビランドサガ)※ジョジョの奇妙な冒険と地球の歩き方(ワールドマップ・ダイヤモンドは砕けないの仙台市まで網羅)
・聴覚 交通オリジナルアナウンス、現地の方との交流、ファンとの交流
アナウンス関連:のと鉄道車内アナウンス・千葉モノレール車内アナウンスCD販売
現地の方との関係性:飲食店や商店などの店員さんとの会話
※福井の事例:AKUSHUさんの事例 スタッフ全員が小説を読んでいる
→イベントの時期にはTwitterのスペースを活用して企画担当者がほぼ参加して、企画の裏話や作品の話をファンを交えて情報発信と交流をしている
※ファンとの交流:オフ会の実施やそういった場所を提供する
→関東のファンの方には福井物産展で作品や福井の話ができる(企画担当者も参加して名産品の紹介なども行っている)
・味覚 食べ物(地元料理)、飲み物(地酒)
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Ⅱ 聖地巡礼企画のはじめかた
そもそもの前提として4つの要素が必要
◯時間
準備には最短でも1年、余裕をもって2年
企画の規模によってはもっと早く取り組める
ただあくまでIP側とのやり取りやデザインのチェックなどに慣れている会社であればとてもスムーズで時間もかなり短縮できる
◯人手
誰とやるのか、行政か事業者の方で作品の理解があってかつ営業や提案、行動力のある方と出会えるかどうか。役割を分担して取り組むことも想定が必要
※もしくは経験のある事業者にお任せをして行政は店舗や事業者を紹介して引き合わせる立場、あとの説明や調整は特定の業者がすべて管理まで行う
◯予算
企画には時間と一緒でお金がかかる
どこがお金を出すのか、行政の予算なのか、事業者が出資を募るのか、ここの調整や予算執行のタイミングによっては、開催が一年ずれたり、年度予算として翌年の3月までに使いきる必要があり急ピッチで進めないといけないパターン
◯IP側(ライセンサー)からの許可
そもそも作品として聖地巡礼イベントを許可しないケースも多い。やはりメリットの部分や時間がかかり負担も大きいこと、前向きに捉えてもらえるかどうか
※単純にアニメとコラボイベントがやりたいです、行政として過去に経験はありません。一緒に取り組む事業者の中にもアニメに詳しい人はいません、ライセンスの取り扱いに慣れていません、と言われるとIP側は前向きにぜひやりましょうとはなかなかならない。
※だからこそ実績のある事業者とやるメリット、もしくは専門家の方に現地調査や企画書の作成、スケジュール感の調整などを任せてしまった方がスムーズに進められる可能性がとても高いので、おすすめしている。
ここまでの部分でIP側と行政で話がまとまらずに時間が過ぎて大きな規模で展開できないというケースが発生しているというのが現状だと考えている
ここから準備、実施までの5ステップを説明
あくまで私個人が過去の経験からお話するケースなので色々と他にもやり方はあるという前提でご理解ください
① 現地調査と企画書作成
・作品の理解(何度も見直す)
・舞台への訪問(最低でも2回、4日以上滞在して登場していない観光地なども見る)
駅からの距離、バス停からの距離、歩いていけるのか、レンタサイクルの有無、駐車場のスペースがあるかどうか
等身大パネルが置けそうなスペース、観光案内所でどこまで対応できそうか
宿泊施設の有無、コンビニの有無、飲食店の有無と営業時間、観光名所や遺跡調査
◯資料の作成
聖地の場所と地図上へのマッピング
半日で回れるか、1日で回れるか、徒歩で回るか、自転車で回るか、バスが便利か
作品の概要とキャラクター紹介のページを初めに作る
→行政の方に、どういった作品でどういったキャラクターなのかを伝えるため
→どこが舞台になっているのかを正確に画像付きで伝えること
◯ライセンスの話
行政との版権利用のライセンス
事業者との商業ライセンス
どちらも個人とは契約できない上に、製作委員会に対して個人が提案をしてやりとりをすることは通常考えられない。誰が責任を取るのか、信頼できるかどうか
ロイヤリティ=商品化した際に版権元に支払う料金の割合
ミニマムギャランティ=商品化によるロイヤリティ収入を先払いで版元が受取る仕組み
ライセンサー=ライセンスを管理、アウトする側
サイセンシー=ライセンスを活用して広報販売する側
ライセンサーとして、収入を最大化するためにも、出来るだけ沢山販売してくれそうな所にライセンスアウトしたい。余り販売力・営業力が無さそうだな、というライセンシーに、「手を挙げてくれたのが早かったから」という理由でライセンスアウトする場合もある。果たしてちゃんと販売できるのか、利益が委員会に還元されるのだろうかという不安がある。
何らかの理由で商品の発売が延期に次ぐ延期でせっかく盛り上がってる番組放送期間中に商品が出ず、販売チャンスを失ってしまう
という危険もある。
リスクを回避するために最低限これだけは売って収入あげて下さいねという金額を予め決めて実際に売れる前に先に払っていただくのがMGの仕組み。
他にも製作委員会の窓口手数料や幹事手数料の仕組みも知っておいて損はありませんが、今回詳しくは説明しませんので興味ある方はしらべてみてください
※大洗の事例
ロイヤリティやMG(最低保証額)をバンダイビジュアルとムービックで窓口権利
ケースバイケース、ガルパンはオリジナル作品、MGはほとんどなし手続き
作品として街にはこうしてほしいという要望は出さない→地域に甘えない
地域として作品に必要以上に甘えないでほしいという条件 フィフティフィフティ
商工会にきちんとした版権処理の窓口を設置
大きい企業(グッズを一手に引き受ける会社など)以外は商工会で版権の利用申請受付と利用状況をまとめて報告。それをもとにバンダイビジュアルさんから商工会に修正やチェックの‘結果、請求書などが届いて商工会が料金を支払うという形
※ロイヤリティがあまり高くない、そういった低い金額でグッズが販売されている
その地域の物価、食やモノの料金バランスとかけ離れた料金設定で販売するとファンはある程度かもにされていると感じるケースがある
包み紙を新しくした際の実費分ぐらいしか元の料金にのっていない
エピソードとして、
初日の出を観にくる朝早くから訪れるファンの方に店を開けて甘酒や温かいもの無料で提供したりしている商店の方のホスピタリティ 街の人に会いに行く
企画の段階から意図して仕込めるモノではない
こういった地域の方の取り組み、制作側との関係性
その結果、移住者が二十人ぐらい増えて、週末にはファンが来て買い物をしていく
それを町おこしと言えなくはない 町おこしという言葉には興そうという意志が強く感じられる そこには違和感がありますという意見
だからこそ、経済効果やビジネスを度外視してでもこの作品は面白いといって街がファンを迎えてくれる、そういった環境があるかどうかは企画段階ではわからない
当然地域の人が全員作品を好意的に捉えてもらえるわけでもない
アニメのキャラクターのTシャツを着た集団が街を歩いていたら距離を取ろうと感じるのは普通の感覚だと思っています。これは差別とかではなく異質なモノだという感覚が働く。
※年齢層の話
ガルパンなどは比較的年齢層が高い30代以上が中心、全員社会人として働いている
ファンの方のモラルも比較的高い、無責任な行動をとる人が少なかった
自分達の行動によって、やはりアニメファンはと思われてしまう可能性を自覚していること。
こういったいくつもの条件や関係性、地域のホスピタリティがいくつも重なって、今のような聖地巡礼が成立している
コンサルタント会社が表目的なイベントや結果を見てこれをマニュアルにして、ただ同じようなイベントを他の自治体でも提案するのはあまりにも現状を理解していないと言われても仕方ない
◯企画書の作成
※描き下ろしを依頼するかどうか
それだけで30万ぐらいの予算は確保しておいた方が良い
依頼から作成には3ヶ月から半年以上はかかるので開催時期的にも可能かどうか
背景や服装、雰囲気やテーマなどもあれば相談をしておくこと、制作会社に全て完全に任せているケースも多い
→いつ開催するか(予算は年度内のため3月末までに使い切らないといけない)
1月から3月、7月から9月のタイミングが多い
・視覚情報の要素
ポスター(コラボ感のあるもの) 単価1000円前後 300枚なら30万円
→観音寺ゆゆゆコラボ、沼津コラボ、徳島阿波踊り、兵田印刷プロデュース系
いただいた素材によって、背景まで描き下ろしを依頼するかどうか
→兵田印刷さんでは写真からイラスト風に加工することが可能
設置まで保存しておける場所を準備しておくこと
・バッシング対策の現在(特にキャラクターのビジュアルを利用する際の配慮)
特に肌の露出面積が大きかったり、素足であったり、何かしらの指摘が想定されるデザインは初期の段階から除外しておくこと
※過去にのうりん、日経新聞の月曜日のたわわ、沼津のみかん、駅のガラスラッピングでの指摘で張り替え
※デザインとしてただ立っているキャラクターイラストではなく、何かしらの動きがあるポージングのイラストを活用すること
(ラブライブシリーズの番組告知ポスターを参考)
のぼり 単価1000円前後で作成可能
→大洗、沼津、観音寺、館林、秩父など
大洗のように「ようこそ大洗へ」といったメッセージがあるもの
※ライトノベルの場合、そもそもキャラクター素材が少ないため4巻ぐらいまで出たタイミングの方がより企画デザインの幅も広がり、商品としても効果的
※描き下ろしキャラクターを依頼する場合 一体につき5万円程度
3ヶ月以上半年程度は制作に余裕を見て、予算として見積もりの中に30万ほど想定しておくこと。
◯聖地巡礼マップ 単価20円〜50円前後 3000枚〜5000枚程度 50万円前後
大きさやどこまでの地図を記載するか、表紙のデザイン、観光情報やおすすめの食情報を記載するか、キャラクター紹介や物語概要をどこまで記載するか
※全国で配布されている聖地巡礼マップを集めておくこと
いろんな比較ができてより完成予想図を想定しやすい。また基本となる地図データを行政さんでPDFやPNGデータで保管しているか確認しておく
◯等身大パネル 1体5万円前後 5体で30万円前後
1体あたり5万円ぐらいは見ておく必要がある
どこに設置できるのか(有人の施設、管理ができるところ、営業時間の問題)
当日の設置まで保存しておける場所を想定しておくこと
体験レジャー要素の企画(巡礼)
何かしらのラリーイベントの提案
◯スタンプラリー(デジタル含む) ノベルティ1000コ 30万円前後
→有人の施設に設置しなくてはならない(デジタルなら懸念なし)
湯涌ぼんぼり祭りでは、アプリではなくQRコードからWEBで対応可能な形
予算的にも比較的安くなるため提案しやすい
※コロナの状況もありできるだけ触れるものは設置すべきではない
インク切れや破損の対応も想定しておくこと
◯飲食店コラボ(お買い物コラボ)
→地域の飲食店や書店などでお買い物、飲食された方にノベルティ配布
参画店舗が増える=デザインを増やす必要がある
全店舗実際に利用して価格帯と店の雰囲気などを確認
※店舗がショッピングモールの中にある場合は、モール自体に提案をして上から店長などに企画への協力を落とし込んでいいただくというパターンも検討できる
そのままモールさんが企画に協力してもらえれば、さらに企画の幅を広げることができる
※オリジナルメニューの開発には制作側への提案と許可が必要
※キッチンカーの事例(沼津、ゆるキャンの事例)
行政の方に取りまとめていただいて、説明と配布のレギュレーション、残数チェックの報告体制、それに合わせて補充の体制構築、細かい連絡のやり取り
参画店舗が増えれば増えるほどラリーイベントとしては充実、負担は増
◯デジタルスタンプラリー&ARマップの場合 200万〜1000万
GPSでどこにでも設置ができる反面、交通量の多い道路や交差点、施設などをスポットにする場合は事前に確認と協力をお願いしておく必要がある
スマホを持ってみながら巡礼するため、安全面での注意もある
あとはどんなデザインかは後にして、どういったグッズを制作するか
簡単なアイテム一覧を参考に記載しておく
(製造できる会社を探しておくこと)
ここまでの要素で企画書の初版は終了
※鉄道コラボ 車内広告、ラッピング、乗車券、ヘッドマーク、等身大パネル
・千葉モノレールの事例
ラッピング:半年で150万円から200万円
駅広告:1ヶ月3万円から5万円 駅に掲載できるスペースが異なる※主要駅高い
車内広告:1ヶ月3万円から5万円 ドアの上、ドアの横が高い
・大洗のラッピングエピソード紹介
どこまで交渉して安くできるか、自分達で人手を集めて取り組むという方法
・入場券と乗車券の販売(あの花やガルパンの事例)
鉄道会社によってとてもこだわりが出やすい 1500円前後で販売
大洗はすでに第20弾以上販売されている
※バスコラボ 車内広告、アナウンス、ラッピング
鉄道と考え方はほぼ同じ
鉄道のところでは話はしてませんが、声優さんによるアナウンス
→のちにCDとして販売しているケースもある(のと鉄道と千葉モノレール)
声優さんへの依頼方法、プロダクションや事務所に問い合わせる方法
→音響やイベント会社さんでキャスティングから契約、スケジュール調整、
音響スタジオの予約、セリフの台本化、音声編集までまとめて依頼できる
声優さんのランクや仕事の内容によって異なる、収録時間や人数とかによる
→相場として1時間あたり5万円前後
※タクシーコラボ ラッピング
沼津、マチアソビ徳島の事例、交通会社と相談してできるかどうか
※レンタサイクルコラボ
ゾンビランドサガで活用されている、アニメツーリズム協会に相談可能
※施設コラボ 観光名所・遺跡や博物館など(入場料がある場合はRY注意)
行政と協力体制が取れているか、中でイベント開催する場合入場料にライセンス料が上乗せされる可能性もある、ロイヤリティの支払いが必要になるケースあり
※宿泊コラボ ホテルや旅館との調整、どういったコラボをすべきか
KADOKAWAところざわサクラタウンのアニメホテルの事例
書き下ろしキャラクターとコラボルーム、本格的なコラボレーションホテル展開
→かなりのIP側への支払いが発生する、そもそものプラン料金が1万円を超えやすい
実施するなら大洗の応援パックのような形でちょっと料金に上乗せをしてノベルティをプレゼントするという形が地域では理想かもしれない
※お土産コラボ 調整とロイヤリティ、製造までに時間もかかるため、事業者側からどうしても商品を作りたいという要望があった場合のみ相談し検討。負担大きい
→元の価格に、ロイヤリティ分、ノベルティ分、デザイン料包装紙分を上乗せ
行政や事業者との相談の中でどこまで実施できるかを調整
② 行政への提案
まずはどこの部署と相談する必要があるのかを調べる
市なのか県なのか
・観光課
・観光協会(連盟)
・商工会議所(青年部など)
・温泉協会や商店街連盟など
※前提として予算がある部署、もしくは組める部署
※個人協賛やクラウドファンディング、ふるさと納税という手法もあり
※予算の額によっては企画の内容も変更、予算確定のタイミングにもよる
まずは電話して聞いてみる→アニメや映画のロケ地対応の部署→紹介してもらう
※良い反応がもらえたところにしっかりと提案してみる
その場合はその部署が過去にどういったイベントやポスター作成しているか
現地の調査をして、行政との調整に半年から1年はみておいても良い
→予算が確保できるという話になれば次のステップに進むことができる
ここで行政側からNGが出るケースも多い
③ 事業者への提案
・地域としてどういった取り組みが求められているのか
コロナの影響で飲食店が悲鳴を上げているのでファンの方には食を楽しんでもらえるような企画を考えたい
地域の観光名所を、聖地巡礼で訪れたファンの方にも巡ってほしいので、巡礼イベントの中にルートとして組み込んでほしいという行政側の意見もうまく盛り込む
などなど
行政側の意見をうまく企画に反映させていく段階にはいる
⇨行政側には飲食店の紹介や観光施設の担当者を引き合わせていただき説明する
※作品の理解がない事業者とは組まない
→協力する様子がない行政ともやらないという選択も必要
事業者とくむ場合
その会社がどれだけアニメの理解があるか、もしくは実績があるかが重要
制作側に提案した際に、過去にアニメ関連で仕事をしたことがないと、その時点でうまくいかない可能性というのを懸念されてしまう、もしくは面倒だと思われる
→ Bto Bでありビジネスという観点で話が進むので、コラボではなくタイアップ
商業として売上や利益を高めることが目的、議論の中心になりやすいため注意
※どれだけ儲かるかではなく、どれぐらい盛り上げることができるかという議論
※事業者と組むことでイベントの幅と深みが出せる一方、調整という負担増
ライセンスの知識や色こうのチェックなど
長期的かつ細かいやり取りが続く中でリタイアしていく事業者がかなり多い
※企業の選定(プロボーザル)
総合的に、企画の実現において実施体制や生産体制、実績などから優れている企業を選定する必要がある(企画競争入札)
④ 制作会社への提案 についてお伺いしていきます
原作側に権利がある場合と、製作委員会方式で出資会社に権利がある場合
版権の管理者は基本的公表はされないため、提供に出てくる会社で絞る
行政側から連絡を取ってもらい繋いでもらう形式をとる
もしくは
KADOKAWAの一般社団法人アニメツーリズム協会に連絡し相談してみる
※ライセンス周りの調整を担ってもらえるケースもある
◯実際に提案をする
提案する際に、アニメ業界の知識や条件などを知らないと議論にならないケースがあるため、実績のある会社と協力してやることが重要
信頼関係がなければ、制作側も聖地巡礼のために時間を割いてはもらえない
※この段階で初めて、企画としてOKかNGかが判断できる
※制作会社(IP側)とのライセンス契約
行政とは販売やお金のやりとりが基本発生せずに広報PRとして活用するライセンス
事業者とは、販売する商品の製造数に合わせてロイヤリティを支払うライセンス
行政と事業者での事業提携などの契約
3者間での契約のやり取りがある(使用する期間や細かい規定など確認)
⑤ 実施までの準備、告知方法と広報戦略
ここから先は主に行政側と事業者と製作委員会で細かいスケジュールと調整、モノづくりの段階に入るため、私のようなコーディネーターは基本的にサポートに回る
主に、ポスターデザインへの意見、聖地巡礼マップの下地作成、デザインへの意見
SNS上での情報発信や、ファンの反応から告知方法の検討、HPやプレスリリースの内容チェック、発表用資料の作成、現地へ足を運びながら協力店舗への挨拶周り、関係性構築などなど
情報解禁日に合わせて情報発信の作戦をたて、実施までカウントダウンなど実施
行政の予算の中にグッズの製造費用は含まれない。自治体がものを販売する形は取らない
各商店や飲食店がそれぞれで企画してグッズを作るケース、大量には作れない、デザインに統一性がなくなる、小物系がほとんど
基本的には、メジャーな商品に対して地域オリジナルデザインで提案
販売場所やブースの広さから、在庫の管理が難しいかさばるようなグッズはNG
どの商品がどれくらい人気になりそうか
グッズ買った際にも何かしらの企画やサービスを検討(ショッパーなど)
・ポスターは管理が負担大きい
・アパレル系はそもそも製造コストが高く販売価格も高くなるためネガティブ
・とはいえ良いデザインにすることが肝心
◯イベント開催における重要な要素
・作品と地域を合わせたイメージをしっかりと追求し表現すること
・訪れたファンのかたが現地の方とコミュニケーションが取れる場所を設ける
・アンテナショップのような立ち位置でファンが集まれる場所を用意する
・SNS上での情報発信を積極的に取り組み、期待値を上げていくことハッシュタグ等
※行政からの強すぎるPRは逆に批判を招くケースがあるため注意
あくまで現地のファンと県外のファンが一緒に盛り上がるような環境形成
・訪れたファンの方の手元に残るような記念品(ノベルティ)の重要性
・地域オリジナルの質の高いグッズの制作
・地元のお土産や特産品に関心を持ってもらえるような情報を提供
◯オリジナルコンテンツに関して
本日のビッグサイトでのコミティアの話、企業ブースに熊本県菊池市
南北朝時代に活躍した菊池一族という武士をキャラクターにしたPRを展開
ゲームをつくった、音声ガイダンスも提供、アニメを作りたい
「菊池ファンクラブ」そもそも菊池市には名湯百選、名水百選、名滝百選で13か所ある
→ そもそも地域にある魅力に絡めることが大前提、温泉むすめがよい例です
女性ファンがどういった服装で現地にきて、どういったものを購入し身につけるのか
そういった観点でアイデアを出して、映像化すべきなのか、それとも別のコンテンツとして展開していくべきなのか →キャラクターPRでは京都府精華町京町セイカというキャラのPR活動とかも参考にした方がよい
◯コンテンツがない場合はどうするのか
街が田舎で何もない、駅前はシャッター街でこれからどうしたら街が元気になるか
考え方としては逆で、シャッター街がある、山がある、大きな川がある
そういったネガティブな部分をポジティブに全部切り替えていく必要がある
シャッター街と実際何に活用できるか、見て楽しむコンテンツは提供できそう
ただ見るだけでは満足しない、聴覚の部分で音楽はどうか、味覚の部分で地元の食はどんなものがあってそれは珍しいものなのかどうか
もともと弱点だと思っているものが実は強みだったりするケース
ただ、弱点を克服することはできない、定数と変数の考え方で、自分ひとりではどうすることもできないことは現場では多い、予算やものづくりに関してもそう
定数の部分は変わらないなら、変数の部分で自分がどれだけそこにつっこんでいけるか
山しかないなら、山をとことん体験してその中でたのしいと思ったことをアイデアにいれる、シャッターしかないならシャッターをどう使うかを考えていくべき
魅力は意外とたくさんあるけど、磨かないと光らないものなんてたくさんある
そもそもあるものを真逆の視点で考える意識が必要だと思います
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Ⅲ これからの聖地巡礼企画について
・ラノベ(地域性の強い作品の創作・発掘)を活用したまちおこしの可能性
→過去~現在の事例
「ラノベ7戦士が町おこし 鶴ケ島舞台の作品、企業PRやイベント」
(「朝日新聞」2015年6月5日付朝刊・埼玉)
「若者らPRイベント 鶴ケ島をラノベの聖地に」
(「朝日新聞」2016年7月26日付朝刊・埼玉)
「私たちの松戸、ライトノベルに 聖徳短大生6人、舞台は市内の名所」
(「朝日新聞」2016年12月27日付朝刊・千葉)
「地方とラノベ」
(「中日新聞」2022年3月11日付夕刊)
・小説(活字)で語られる物語の「解像度」を高めることに寄与する取り組み
→『チラムネ』の事例:物語の舞台をよく知りたい(解像度を高めたい)というニーズを生じさせた作品/そのニーズに見事マッチした企画等の展開
→今後の小説の作品創作や舞台のPRに生かせそうなことはあるか?
アニメや漫画、映画といった映像もしくはイラストがあるものは、そのまま聖地巡礼に直結する
ライトノベルの場合は、そういった背景の様子がわからず活字で読み取るしかない
読者がその町並みや風景を想像して世界観を膨らませていく
活字による舞台や風景の描写が細かいことで、より読者の風景や町並みの解像度が上がっていき、その解像度が高ければ高いほど聖地巡礼に訪れた際の感動は大きくなる
そもそもアニメの聖地巡礼イベントでは、制作側に直接的にライセンス料金、グッズの製造におけるロイヤリティしか収益にならない。ただ聖地巡礼を企画することによって作品のPRにつながり、その地域でのグッズの売り上げが伸びたり、原作小説の売上が伸びる、アニメで知ったというファンの方が聖地巡礼を通してより作品に興味を持ち、原作まで読んでみようという購買行動に繋がるケースがある。
こういった聖地巡礼イベントにおいては、制作側に対してどういった効果や収益が発生するのかという観点でも、しっかりと提案し、地域として作品を応援していくことも重要
特に、ライトノベルの聖地巡礼においては、読者がイマジネーション(想像)で補っていた物語の世界観、景色や風景を実際に現地で感じて想像の部分を補完することできるという部分で、アニメの聖地巡礼と比較してより満足感が強いのではないか
また、コラボイベントの中で、今まで描かれていなかったキャラクターたちの暮らしている町並みや風景を実際に合わせたイラストに落とし込む、本来描かれなかったイラストとして完成させることができる貴重な機会となる
今後、まず聖地巡礼イベントを検討されるのであれば過去の事例を収集してなぜうまくいったのか、なぜ失敗したと言われているのか、実際にファンの方にとって聖地巡礼はどういった期待があるのかを情報収集し続けて自分なりの回答を持っておくこと。次に協力してもらえる人を時間をかけて、知り合いを辿って集めてチームとして取り組んでいくこと。
・誰が旗を振るのか
・地域と作品とファンを意識した企画がしっかりと提案できること
・地域と作品とファンが良いと思えるデザインを作ることできるか
※実績のある会社に任せることが最も効果が期待できることは間違いない
地域として取り組むということは、作品を背負ってファンと地元住民の期待や不安に全て真摯に対応し続けることができる体制が現状あるのかどうかをしっかりと判断してください。その上で本日お話した内容をもとに、作品と地域にあった企画を検討していただきたいとます
聖地巡礼企画コーディネーター 社貝人
福井市で開催された聖地巡礼イベントの立ち上げに関わり、現在も複数の作品で聖地巡礼イベントを企画提案、自治体や事業者との調整や準備に取り組んでいる。
そのほか、イラストクリエイター支援サービスの立ち上げディレクターなども担当。NFT事業や新規コンテンツの立ち上げなど、サブカルチャー関連のコーディネートやアドバイザーとして活動。